【写真旅&地元B級グルメ】フォトグラファーあまのしんたろう『ヤミーアートブログ』

【まち撮り系写真家】が送る日本のスナップ写真ブログ「無名の町の路上観察」から「有名イベント」まで筆者体感の物事を現代アートなアプローチで面白い世界に!常にカメラ持ち歩く人に共感貰えそうで特にオススメ|愛知県岡崎市出身★第5回写真出版賞・最優秀賞

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【レポート】愛知県内4都市同時開催!『国際芸術祭あいち2022』旧あいちトリエンナーレ

国際芸術祭あいち2022とは

2022年7月30日~10月10日、愛知県の名古屋市、一宮市、常滑市で、世界32か国100組のアーティストが作品を展開するアートイベントが「国際芸術祭あいち2022」

前回まであいちトリエンナーレだったものから名前が変わって初めての開催。なのでこれを第1回というのか第5回というのかは判断が難しいところ

今回のテーマは「STILL ALIVEー今、を生き抜くアートのちから」で、「疫病、自然災害、内線、戦争など」「こうした時代をいかに生き抜く事が出来るのか、アートには何が出来るのか、生きるとは何か」(公式ガイドマップより抜粋)を、観客とともに考える内容になっている

チケット

全会場に入れる会期中フリーパス3000円1日券1800円。1日券を使った後でも、その券を持って別日に1200円払えば3000円のフリーパスにアップグレード可能

 

 

愛知芸術文化センター会場

名古屋の中心地「栄」にある愛知芸術文化センターの会場は10階、8階、地下2階に48組のアーティストが展開。各会場の中で最も規模の大きい場所

あまりに数が多いのでここでは自分が気に入った作品を抜粋して紹介!

ロバート・ブリア『フロート』

この会場で一番好きな作品がコレ。この大きな丸い物体は、注意して見ないと気付かないくらいゆっくり動いている

地面を注視してると、すごい遅さで動いているのが分かる

この物体も上の仲間。作品説明には全部で4作品と書いてあったけど、実際にあったのは3つだった。一生懸命探した後に、諦めて係の人に聞いたら1つは修理中でここにないとのことだった

目を離していたらおかしな位置に

Åbäke & LPPL

以前名古屋市の有松絞りまつりで見て、幼少期に名古屋のいとこの家の近くの神社で見た記憶が蘇った「猩々」という架空の動物。今回は作家と協力者たちで合わせて約40体作ったとのこと。いつ見ても恐い

マルセル・ブロータース

シャワーを浴び続けながらインクで文字を書くという映像作品。もちろんまったく書けないけど、何度も何度も描き続ける様がシュールだった

笹本晃

実用品を組み合わせた舞台の大道具のような作品

障子が表裏2層に貼られていたり

ドアののぞき穴が多すぎたり

シャッターから無意味に出てきているスポンジに無意味にライト当たってたり

潘逸舟『ホコリから生まれた糸の盆踊り』

帯芯(帯の中に入れる布地)の工場の中を白い糸が舞いながら移動していく映像作品。工場の音や機械を叩く音が鳴り響いて、映像とマッチ。長い時間ボーっと見ていられた

ミルク倉庫+ココナッツ『魂の錬成』

会場の吹き抜け空間にあって、愛知芸術文化センターそのものを呼吸器官に見立てた作品とのこと

観客はこの骨組みの中の通路を歩くことができる

作品の上部で取り込んだ水が→

→オブジェに水たまりを作りながら循環する

観客も歩くことでこの器官を循環することになる

荒川修作+マドリン・ギンズ『問われているプロセス/天命反転の橋』

岐阜にある養老天命反転地を作ったコンビの作品。この作品は建築化されずこの状態のものしかないが、今回の展示ではVRで体験することができる(要予約)

我々に替わって人形が作品の世界を楽しんでくれている

建築作品にしてくれたら絶対渡ってみたい!

橋を進むにつれてより複雑化していた

出口側。この形状は養老天命反転地に似たのがあったはず

クラウディア・デル・リオ『素直さ、不安、そして内緒話』

24mもの長さがある大きな作品。作家解説にはいろいろ難しい制作理由や追求内容が書いてあったけど、それはこのさい置いておいてもいいくらいとにかく魅力的なキャラクターたちが描かれていた

ヤコバス・カポーン『未来への警告 第2幕(誠意と共生)』

6週間ほぼ毎日滋賀の人工林に裸足で入って一本一本の木に手をかざして回るパフォーマンスの記録

今回の展示作品に多い「”無駄な労力”を信念持ってやりきる系アート」の中でもかなりマニアなことをやっていると感じた。解説見た感じ、この行動の意味は周りの人がそれぞれ考える感じなのかな

小野澤峻『演ずる造形』

6つの玉が動き出す作品。振り子運動+回転して、見ていて気持ちのいい動き

玉同士が回転しながら離れては近づくを繰り返す

名古屋でこういう装置を見ると、名古屋市科学館に置いてありそう、とか思ってしまう

ただこの作品のすごいのは「見飽きてきたころに少しだけ玉がぶつかるようになっている」ところ。軌道が乱れてもそこからまた復帰していく様子が楽しかった

 

まとめ

今回載せたのは自分が特に面白いと感じた作品。逆を言えば面白いと感じなかったものも結構あった

気になったのは作品内容の面白さ以前の問題の展示が多かったこと

たとえば、通して観ると30分や1時間以上かかる映像作品はこういう多くの作家が集まった展示ではやめてもらいたい。「たくさんの作品を次々見ていく」という催しなのに、面白いかどうかすぐに判断できない長時間映像作品があるのはストレス

自分は3分くらい見てつまらなそうだと思えば見限るんだけど「全部見たらすごくいい作品だったかも」という思いがチラつく。また、社会問題をテーマにした映像作品をスルーするのは後ろめたい気持ちにさせられてツラい

あとこれは自分の語学力が低いせいではあるんだけど、海外作家の作品の文字は全部日本語訳してもらいたい。アート楽しむために「アートの勉強」しなきゃいけないだけでも結構大変なのに、アート楽しむために「外国語の勉強」までしなきゃいけないならもうお手上げになる

「分かりやすい展示」じゃなくてもいいからせめて「分かりにくくない展示」にはしてほしいと思った

意見はこのくらいにして。いくつかの作品はしっかり楽しめたから行って良かったと思う。アートに興味のある人には十分オススメ!

今後は他の会場も観に行くので、その際はまたこのブログにレポートを書きます

おまけ

展示を一周観た後にもう一度ロバート・ブリアの作品を見に行ったら、やっぱり全然違う場所にいた

 

 

 

 

『国際芸術祭・あいち2022』一宮市会場

3年に1度行われる愛知県の芸術祭『あいち2022』 先日の名古屋市・愛知芸術文化センター会場に続いて今回は一宮市会場に行ってきた

ここは「一宮駅前エリア(17作品)」とそこから2㎞離れた「尾西Aエリア(2作品)」さらに2㎞離れた「尾西Bエリア(2作品)」の3か所があり、全会場を見るためにはバス等を使う必要があるほど広範囲での開催だった

※一宮市とは

今回、芸術祭の会場に選ばれた「一宮市」は愛知県の北西の端にある中核市

『尾州』と呼ばれるこのあたり周辺の地域は、かつて織物の生産地として知られていたけれど、時代の流れで織物の生産は海外に移っていて工場は減っている(それでも羊毛(ウール)製品の生産量はここが日本一)

現在では「モーニング文化」「七夕祭り」が有名で「名古屋のベッドタウン」として都市開発が進んでいる街

 

真清田神社エリア

一宮市の名前の由来は、尾張国の「一宮」(地域の中で最も格式の高いとされる神社)であるこの真清田神社があったため

神社脇の道。展示会場に向かう途中で、その街ならではの景色を楽しめるのがこのアートイベントの良いところ!

小杉大介『赤い森と青い雲』

旧一宮市立中央看護専門学校が会場なので、もともとあったベッドを使っての展示。ベッドの近くに行くといろんな人たちの会話が聞こえてくる

西瓜姉妹(ウォーターメロン・シスターズ)

人間の性的開放がテーマの映像作品とのこと。パーティー的なノリの中にスイカを使った性的表現があったりして、カオスの中にメッセージある感じ

鑑賞者をモーションキャプチャーすることで誰でもウォーターメロンシスターズになれる!

ケイリーン・ウィスキー『My name is Kaylene Imantura Whiskey』

作者やその友達のおばさんが陽気な音楽と陽気なイラストの中で陽気に踊る作品

なにかと社会問題に絡めて深刻ぶる作品が多い中、底抜けに明るい作品に元気をもらい癒された

まるでキングオブコント2017準優勝時の「にゃんこスター」のような存在

石黒賢一『夕暮れのモーニング、二つの時のためのモニュメント』

2019年まであった地域のシンボル的な木を彫刻で再現。それと一宮市の代表的文化である喫茶店のモーニングの映像を並べた作品

これら2つは全く無関係に感じると同時に、密接な関係があるようにも感じられる不思議な構成だった

アンネ・イムホフ『道化師』

旧一宮市スケート場という最近閉鎖された施設での展示

場所の雰囲気が良すぎて空間だけですでにアート空間が成立していた。映像スクリーンが2つあったと思うけど、そっちはもうほとんど見てなかった

氷を作るためのパイプがむき出し。それが広い床面にビッシリ敷き詰められていて、これこそが大スケールのアート作品と言ってもいいくらい

 

市役所~本町商店街エリア

一宮駅前にあるアーケード「一宮市本町商店街」

今となってはレトロな商店街な雰囲気だけれど、一宮市の大イベント「一宮七夕まつり」の時にはここ一帯に飾り付けが並んですごい賑わいをみせる

奈良美智

会場のオリナス一宮元・名古屋銀行一之宮支店を改装したもの。なので金庫や装飾壁など当時の名残が見られる

彫刻作品『Fountain of Life』は会場入口付近側からだと、この穴を覗いてみる仕掛け

奥まで行くと全貌が見られる

広いフロアの真ん中に小部屋が設置

正面の絵画作品は『Miss Moonlight』 壁の色との組み合わせがキレイ

バリー・マッギー『無題(つむぎロード)』

つむぎロードという道の公衆トイレ壁面の作品。解説に”作品の意味”的な記述がなかったから、鑑賞者がそれぞれ感じたままを楽しむ作品なのかな

眞田岳彦『あいちNAUプロジェクト《白維》』

一宮市役所ロビーでの展示。以前に愛知県内7つの美術館で参加者を集めて羊毛をより合わせるイベントを行い、それを最終的に作家がまとめ上げた作品

市役所自体がキレイ。14階建てでエレベータのある吹き抜けがカラフル

11階のレストランは広くて明るく、ここから一宮市が一望できた

横に走っている円筒形の屋根が一宮本町通商店街のアーケード

上の写真の右に写っているドーム状の場所がここ。”織物の街”らしい飾り付け

アーケードを抜けると味のある建物が

今にも「キャイ~ン!」をしそうな二対の街灯オブジェ

遠藤薫『羊と眠る』

ここ豊島記念資料館は駅前からかなり離れているので注意(最寄りの作品から800mくらい)

館内には羊毛生産の歴史をあらわす機械や民具が展示されている

織機に交じってムービーや小物作品が点在

動物の皮を剥ぐシーンは映像で見るとやけにショッキングに映る気がする。実際に目の前でやるならまだしも、こういう見せ方は好きじゃないかな

2階ホールは織機とウールのインスタレーション。光の具合も相まって美しかった

 

尾西エリアA会場

曹斐『新星』

尾州で最も古い歴史を持つ現役の毛織物メーカー「国島株式会社」の工場の一角が展示会場に

作品は97分で「SF映画」そのものだと思う。冒頭の10分くらい観た感じ「世にも奇妙な物語のSF回」くらいの、なかなかのクオリティだった

時間あれば観たい内容だったけれど、一宮駅から離れた会場なので時間の融通がききにくいのがネック。最初からここで97分使う計画を建てていないとこの後の動きがとれなくなりそうだったので、自分は早めに切り上げた

塩田千春『糸をたどって』

「のこぎり二」という、旧毛織物工場をアートスペースに再利用した会場

毛細血管のように赤い糸が張り巡らされて、その中を歩くことができる作品

織機が置いてある奥の部屋は、より荒々しく糸が張り巡らされていた

古い織物工場を作品が飲み込んでいて、そこに足を踏み入れた自分まで作品に飲み込まれるような感覚を味わった

 

尾西エリアB会場

「尾西生涯学習センター・墨会館」での展示。建築家丹下健三が設計した建物を登録有形文化財として市が保存し、現在は公民館としても利用されている

迎英里子

「物質の身体性」をパフォーマンスでみせる作家なので、映像と合わせて見て完成する作品なんだと思う

この映像では、写真中央の機械を使ってオレンジ色のふわふわな物体を巻き取っていた

ガラスの奥の中庭でパフォーマンスをした時の様子が上映。大きな画面であまり編集なく流されていたから、スケール感や時間軸が理解しやすかった

レオノール・アントゥネス『主婦と彼女の領域』

かつてダンスパーティーなどが行われた独特の造りのスペースでの展示

個々の作品の意味を考えるというよりは、この空間に作品配置した作家の美的感覚に浸る、という楽しみ方をするモノなのかなと思った

 

まとめ

一宮市会場は会場が離れていて移動や休憩の時間管理が難しかった。自分は自家用車で移動して、映像作品は数分しか見ないで、終盤は相当な急ぎ足で回って一周4時間

これから行く人は愛知2022公式サイトガイドマップ(一宮会場のバスの時刻表もある)でどう動くか事前に想定しておくのを強くオススメする。もし映像作品までしっかり見るのであれば、開始10時から終了18時までまるまる8時間必要そう

「さすがにそんなに時間とれない」という人のために”これぞという作品”をピックアップすると

・奈良美智(オリナス一宮)

 超有名作家、ミーハーだけど良いものは良い!

・アンネ・イムホフ(旧一宮市スケート場)

”レジャー施設の廃墟”な雰囲気で会場そのものの魅力がスゴイ!

ケイリーン・ウィスキー(旧一宮市立中央看護専門学校)

ずば抜けて明るい!

・塩田千春(のこぎり二)

古い織物工場と作品の融合空間に入り込む感覚!

 

これらの作品を中心にまわれば満足はできるはず

あと会場から会場への移動の際に「一宮の街の風景」を観るのも楽しいから、そちらもお忘れなく!

 

 

 

 

『国際芸術祭・あいち2022』常滑市会場

先日もブログ記事を書いた愛知県の芸術祭『あいち2022』

名古屋市・愛知芸術文化センター会場一宮市会場に続いて今回は3ヵ所目となる常滑市会場に行ってきた

ここは常滑駅から400mくらいにある常滑焼工房地域の「やきもの散歩道エリア(12作品)」と、そこから約1.5㎞離れた「INAXライブミュージアム(1作品)」の2つのエリアでの開催となっている

※常滑(とこなめ)市とは

愛知県・知多半島の西にある街。伊勢湾に面していて中部国際空港、常滑競艇場、海水浴場、巨大イオン、コストコといった観光に適した施設があるが、なんといっても日本六古窯の一つ「常滑焼」で有名

「とこなめ」という名前は「とこ」が「床→土壌」で「なめ」が「なめらか」。つまり「粘土質の土壌」という意味で、この点からも地域での”焼き物文化の重要さ”が窺える

 

やきもの散歩道会場

常滑市の観光といえばここ。くねくね&起伏のある細い道を歩くと、行く先々に焼き物工房やお店、観光施設などがあらわれる一周1.6㎞の散歩道

道中には24枚もの案内板が建てられていて、分岐点でも迷うことなく進んでいける

デルシー・モロレス

常滑焼に用いられる粘土に、重曹やシナモンパウダー、クローブパウダーを混ぜ合わせて乾燥させた”食べられないクッキーや餅”で床面を敷き詰めた空間作品

近くで見ると食べられそうな見た目

持った感じ、けっこう軽くてクッキーそのものだった

グレンダ・レオン『星に耳をかたむけるⅢ』

 星座がギターの弦で作られていて、鑑賞者が自由に触って鳴らすことができる作品。いろんな弦を鳴らしているとたまに同じ音程の弦が見つかるので、それを同時に鳴らして確認するのが楽しかった

『月に耳をかたむける』 月型のタンバリン。これも叩くことができる

シアスター・ゲイツ『ザ・リスニング・ハウス』

音楽(この時はジャズ)が鳴り響くお屋敷に、光の作品が並んでいた

船底天井が特徴的

入口の頭上に当たるここだけが”吹き抜け”になった不思議な建物

窓の外を見ると、謎な位置にやきものが転がっていた

とこなめ散歩道の様子

高さ3.8m幅6.3mの「とこにゃん」はシンボル的存在!

道すがらの窓辺にも焼き物作品があって楽しい

「だんご茶屋」は曲がり角の目印ポイントも兼ねていた

作品タイトル『いくら重い枷を付けられても”希望”は必ず溢れ出る』みたいな芸術作品っぽいガラクタが道のわきにあった

さりげなく『海の底』という打ち水作品があった

この「土管坂」は上記の「とこにゃん」に並ぶ有名スポット

登窯公園の巨大オブジェの力強さも見もの

新たに建設中の窯?

連携企画事業『Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructions』

スイスと日本の大学の研究室が作ったインスタレーション作品

この門の作品は東京大学チームの制作。垂れているのれんのようなものは陶器でできていて、ミストを吹き出すことでまわりを涼しくする効果も

EHTチューリヒのチームの作品は金属を使わずに強靭な木造構造体を建てる試み

トゥアン・アンドリュー・グエン『ザ・ボート・ピープル』

20分と好感が持てる長さの映像作品

人類が滅亡した世界を旅する少女が主人公で、その子と海に打ち上げられた仏像の首との対話がメイン。少女はこれまでずっと”モノを複製しそれを燃やす”という作業を繰り返していて、その理由を「どこにでも連れていけるようになるから」と話す

作中で使われた仏像の首が展示

フロレンシア・サディール『泥の雨』

地元常滑の陶芸家水上勝夫とのコラボレーション作品。1万2千個の陶器のボールを、作家の故郷アルゼンチンでたまに起こる現象「泥の雨」に見立てたもの

『S/T 無題』上の作品『泥の雨』を作るときにできた灰を作品として展示

会場の窓も作品とリンクしているようで素敵だった

尾花賢一『イチジクの小屋』

この地に生まれ暮らす「イチジク男」と「常滑市」が重なり合って語られていくマンガ風の作品

置かれている小物それぞれにストーリーが添えられていた

ゴミにもストーリーはある

イチジク男の母が、魚の行商に使っていたカート

イチジク男の王国の入口

畑には実際にイチジクの香りが漂っていた

実際にイチジク男の銅像が目の前に建っているとなると、いよいよ虚構と現実の境界があいまいになってくる

 

INAXライブミュージアム会場

INAX(現在のLIXIL)が運営する文化施設。広い敷地内に博物館資料館各種の体験工房レストランなどがあり、小さな町のような空間になっていた

鯉江良二

『スライラス』帯を何度も巻いたようなすごい長さの焼き物作品

『証言(ミシン)』ミシンを焼くことで反核を訴えた作品

『森ヲ歩ク』森に迷い込んだ景色のような、森そのものが歩いているような、あるいはきのこ雲のような印象を受けた

 

まとめ

古くから観光地として整備されているだけあって、ただ歩いているだけでも楽しかった。行く先々で出会う焼き物店や飲食店が魅力的で、足を止め過ぎて時間が無くなる事態にならないよう注意が必要なくらい

ちなみに、この会場で自分が一番気に入った作品は尾花健一『イチジクの小屋』

その他にはグレンダ・レオン『星に耳をかたむけるⅢ』トゥアン・アンドリュー・グエン『ザ・ボート・ピープル』が楽しみ方ハッキリしてて好きだった

常滑市会場は名古屋を起点にすると「あいち2022」の全4会場の中で一番遠い。それでも”アート作品”と”アートな街並み”の両面を楽しめることを考えると、胸を張ってオススメできる会場と言える!

 

 

 

 

『国際芸術祭・あいち2022』有松会場

愛知県の4箇所の街で行われる芸術祭『あいち2022』のブログ記事最終編となる「有松会場」に行ってきた

会場は有松駅近くの旧東海道600m間の建物で、そこに9組のアーティストの作品が展示。あいち2022全4箇所の中では一番規模が小さく、歩くルートがシンプルで楽にまわることができた

有松とは

江戸時代から有松・鳴海絞り(布を糸でくくって染めることで様々な模様を出したもの)を産業として発展した街。有松絞り国の伝統工芸品に指定されていて、以前このブログに書いた「有松絞りまつり」もここで開催されている

また国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されているエリアは、江戸~明治~大正~昭和の様々な古い建物が数多く現存。その建物は文化財として保存されているだけでなく、現役でカフェ、ショップ、工房などにも使われている

趣あるこの建物はデイサービス施設になっていた。あいち2022の直接の展示ではないけれど軒先には作品がズラリ

ミット・ジャイイン『ピープルズ・ウォール(人々の壁)』

会場内の8軒の軒先にリボン上の絵画『ピープルズ・ウォール』が展示

タイトルにもあるように”権威主義に抗う市井の人々のちからを象徴する旗”という意味合いがあるみたい

今のところの日本で見る分には、ゴキゲンなだけの飾りに見えがち。不安定な国でこれを見ると元気もらえたりするってことかな

『1000回のカレンダー』

希望者が持ち帰り、帰宅後リボンを解いて自分だけの作品を制作、それをネットにアップしていくという作品

プリンツ・ゴラーム『見られている』

屋敷に仮面がいくつも掛けられ、広間でパフォーマンス映像が流れる作品

ムービーは43分。仮面でゆっくり動いていると、なんでもないような動きでも不気味さが増していた

ガブリエル・オロスコ『トロ・シャク(回転する尺)』

日本固有の単位「尺」と「回転」をテーマにした作品。この作品の基になっている棒は6尺で、まわりの和室の間取りや畳にサイズ的に呼応している

こちらは3尺

タクシーの運転手から譲り受けたノートパッド。インク確認のために書かれた模様が「回転」だという意味かな

道中で偶然アーティストに遭遇!自分が豊田で展示した時に初めて会って、ゾウ好き仲間としてお話した方。いくつものゾウのマリオネットを作っているとのこと

調べたら2019年にナニコレ珍百景で紹介されたらしく、大須商店街辺りで有名らしい

このゾウは背中にモノを入れられる便利なコ

ユキ・キハラ『サーモアのうた-Fanua(大地)』

サモアの伝統的な生地「シアポ」と「振袖」の文化的特色を融合させた作品。生地には現代のサモアが直面する諸問題が描かれている

AKI INOMATA『彼女に布をわたしてみる』

有松絞りでミノムシに蓑(みの)を作らせる作品

有松絞りの制作過程の紐でくくった部分がミノムシの蓑に似ていることから着想を得たらしい

羽化して飛び立った後の蓑を展示

イワニ・スケース『オーフォード・ネス』

オーストラリアの先住民族の主食「ヤム芋」の形のガラス作品。「メメント・モリ(死を想え)」の念を伝えているとのこと

ガラス群の中を通れるようになっている

イー・イラン『ティカ・レーベン(マットのリボン)』

長いリボン状の布が会場に垂れ下がった作品

ムービーにはマレーシアの島と漂海民バジャウ族の海上集落の間の54mをこのリボンでつないだドキュメントが上映

 

まとめ

有松会場は良くも悪くもコンパクト。会場をまわりやすいのと同時に、ボリュームは少ない印象で、ムービー作品とばしつつ急いで歩けば90分くらいでまわれる規模だった

ここから愛知芸術文化センター会場までは電車乗り継いで45分くらいでいけるので、そちらと合わせて1日で2会場を観るのには適しているといえる

あと細かい事かもしれないけど、自分としては靴を脱ぐ場所が6ヵ所もあるのが気になった。毎回靴紐をしっかり結び直すのはストレスなので、後半は紐をゆるゆるに結んでスポッっと履けるよう対応したものの、それはそれで歩きにくくて結局ストレス感じてしまった

 

この会場で気に入ったのは『AKI INOMATA』ミノムシの作品。虫に無理させているみたいでちょっと可哀想とも思ったけど、”虫の産業利用”と考えて割り切ればすごく面白い作品だと感じた。(自分はもともと虫が好きではないし、大学では畜産を学んだので生物の産業利用に抵抗少なかった)

この作品観るためにはここに来るしかないんだけど、「あいち2022」の他の3会場と比べると優先度は低いかなと思う

 

全4会場のオススメ度まとめ

これで4会場まわったので各会場のオススメ度をまとめると

【1位】一宮市会場 ー 有名作家アリ、様々な特徴ある会場、レトロな町並み

【2位】愛知芸術文化センター会場 ー 大量の作品が一気に観られる

【3位】常滑市会場 ー 会場をつなぐ道そのものが魅力的

【4位】有松会場 ー シンプルな導線、趣ある古い町並みと伝統産業

の順番。最終的に全部行くならどの順番でもOKだけど、日数が限られているなら上の順位の会場から行くのが自分としてのオススメです!