『国際芸術祭・あいち2022』一宮市会場
3年に1度行われる愛知県の芸術祭『あいち2022』 先日の名古屋市・愛知芸術文化センター会場に続いて今回は一宮市会場に行ってきた
ここは「一宮駅前エリア(17作品)」とそこから2㎞離れた「尾西Aエリア(2作品)」さらに2㎞離れた「尾西Bエリア(2作品)」の3か所があり、全会場を見るためにはバス等を使う必要があるほど広範囲での開催だった
※一宮市とは
今回、芸術祭の会場に選ばれた「一宮市」は愛知県の北西の端にある中核市
『尾州』と呼ばれるこのあたり周辺の地域は、かつて織物の生産地として知られていたけれど、時代の流れで織物の生産は海外に移っていて工場は減っている(それでも羊毛(ウール)製品の生産量はここが日本一)
現在では「モーニング文化」「七夕祭り」が有名で「名古屋のベッドタウン」として都市開発が進んでいる街
真清田神社エリア
一宮市の名前の由来は、尾張国の「一宮」(地域の中で最も格式の高いとされる神社)であるこの真清田神社があったため
神社脇の道。展示会場に向かう途中で、その街ならではの景色を楽しめるのがこのアートイベントの良いところ!
小杉大介『赤い森と青い雲』
旧一宮市立中央看護専門学校が会場なので、もともとあったベッドを使っての展示。ベッドの近くに行くといろんな人たちの会話が聞こえてくる
西瓜姉妹(ウォーターメロン・シスターズ)
人間の性的開放がテーマの映像作品とのこと。パーティー的なノリの中にスイカを使った性的表現があったりして、カオスの中にメッセージある感じ
鑑賞者をモーションキャプチャーすることで誰でもウォーターメロンシスターズになれる!
ケイリーン・ウィスキー『My name is Kaylene Imantura Whiskey』
作者やその友達のおばさんが陽気な音楽と陽気なイラストの中で陽気に踊る作品
なにかと社会問題に絡めて深刻ぶる作品が多い中、底抜けに明るい作品に元気をもらい癒された
まるでキングオブコント2017準優勝時の「にゃんこスター」のような存在
石黒賢一『夕暮れのモーニング、二つの時のためのモニュメント』
2019年まであった地域のシンボル的な木を彫刻で再現。それと一宮市の代表的文化である喫茶店のモーニングの映像を並べた作品
これら2つは全く無関係に感じると同時に、密接な関係があるようにも感じられる不思議な構成だった
アンネ・イムホフ『道化師』
旧一宮市スケート場という最近閉鎖された施設での展示
場所の雰囲気が良すぎて空間だけですでにアート空間が成立していた。映像スクリーンが2つあったと思うけど、そっちはもうほとんど見てなかった
氷を作るためのパイプがむき出し。それが広い床面にビッシリ敷き詰められていて、これこそが大スケールのアート作品と言ってもいいくらい
市役所~本町商店街エリア
一宮駅前にあるアーケード「一宮市本町商店街」
今となってはレトロな商店街な雰囲気だけれど、一宮市の大イベント「一宮七夕まつり」の時にはここ一帯に飾り付けが並んですごい賑わいをみせる
奈良美智
会場のオリナス一宮は元・名古屋銀行一之宮支店を改装したもの。なので金庫や装飾壁など当時の名残が見られる
彫刻作品『Fountain of Life』は会場入口付近側からだと、この穴を覗いてみる仕掛け
奥まで行くと全貌が見られる
広いフロアの真ん中に小部屋が設置
正面の絵画作品は『Miss Moonlight』 壁の色との組み合わせがキレイ
バリー・マッギー『無題(つむぎロード)』
つむぎロードという道の公衆トイレ壁面の作品。解説に”作品の意味”的な記述がなかったから、鑑賞者がそれぞれ感じたままを楽しむ作品なのかな
眞田岳彦『あいちNAUプロジェクト《白維》』
一宮市役所ロビーでの展示。以前に愛知県内7つの美術館で参加者を集めて羊毛をより合わせるイベントを行い、それを最終的に作家がまとめ上げた作品
市役所自体がキレイ。14階建てでエレベータのある吹き抜けがカラフル
11階のレストランは広くて明るく、ここから一宮市が一望できた
横に走っている円筒形の屋根が一宮本町通商店街のアーケード
上の写真の右に写っているドーム状の場所がここ。”織物の街”らしい飾り付け
アーケードを抜けると味のある建物が
今にも「キャイ~ン!」をしそうな二対の街灯オブジェ
遠藤薫『羊と眠る』
ここ豊島記念資料館は駅前からかなり離れているので注意(最寄りの作品から800mくらい)
館内には羊毛生産の歴史をあらわす機械や民具が展示されている
織機に交じってムービーや小物作品が点在
動物の皮を剥ぐシーンは映像で見るとやけにショッキングに映る気がする。実際に目の前でやるならまだしも、こういう見せ方は好きじゃないかな
2階ホールは織機とウールのインスタレーション。光の具合も相まって美しかった
尾西エリアA会場
曹斐『新星』
尾州で最も古い歴史を持つ現役の毛織物メーカー「国島株式会社」の工場の一角が展示会場に
作品は97分で「SF映画」そのものだと思う。冒頭の10分くらい観た感じ「世にも奇妙な物語のSF回」くらいの、なかなかのクオリティだった
時間あれば観たい内容だったけれど、一宮駅から離れた会場なので時間の融通がききにくいのがネック。最初からここで97分使う計画を建てていないとこの後の動きがとれなくなりそうだったので、自分は早めに切り上げた
塩田千春『糸をたどって』
「のこぎり二」という、旧毛織物工場をアートスペースに再利用した会場
毛細血管のように赤い糸が張り巡らされて、その中を歩くことができる作品
織機が置いてある奥の部屋は、より荒々しく糸が張り巡らされていた
古い織物工場を作品が飲み込んでいて、そこに足を踏み入れた自分まで作品に飲み込まれるような感覚を味わった
尾西エリアB会場
「尾西生涯学習センター・墨会館」での展示。建築家丹下健三が設計した建物を登録有形文化財として市が保存し、現在は公民館としても利用されている
迎英里子
「物質の身体性」をパフォーマンスでみせる作家なので、映像と合わせて見て完成する作品なんだと思う
この映像では、写真中央の機械を使ってオレンジ色のふわふわな物体を巻き取っていた
ガラスの奥の中庭でパフォーマンスをした時の様子が上映。大きな画面であまり編集なく流されていたから、スケール感や時間軸が理解しやすかった
レオノール・アントゥネス『主婦と彼女の領域』
かつてダンスパーティーなどが行われた独特の造りのスペースでの展示
個々の作品の意味を考えるというよりは、この空間に作品配置した作家の美的感覚に浸る、という楽しみ方をするモノなのかなと思った
まとめ
一宮市会場は会場が離れていて移動や休憩の時間管理が難しかった。自分は自家用車で移動して、映像作品は数分しか見ないで、終盤は相当な急ぎ足で回って一周4時間
これから行く人は愛知2022公式サイトのガイドマップ(一宮会場のバスの時刻表もある)でどう動くか事前に想定しておくのを強くオススメする。もし映像作品までしっかり見るのであれば、開始10時から終了18時までまるまる8時間必要そう
「さすがにそんなに時間とれない」という人のために”これぞという作品”をピックアップすると
・奈良美智(オリナス一宮)
超有名作家、ミーハーだけど良いものは良い!
・アンネ・イムホフ(旧一宮市スケート場)
”レジャー施設の廃墟”な雰囲気で会場そのものの魅力がスゴイ!
・ケイリーン・ウィスキー(旧一宮市立中央看護専門学校)
ずば抜けて明るい!
・塩田千春(のこぎり二)
古い織物工場と作品の融合空間に入り込む感覚!
これらの作品を中心にまわれば満足はできるはず
あと会場から会場への移動の際に「一宮の街の風景」を観るのも楽しいから、そちらもお忘れなく!
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