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【アート】江戸時代の面影残る東海道・二川宿で開催『駒屋・三ツ田屋アートプロジェクト2023』

 

駒屋・三ツ田屋アートプロジェクト2023とは

2023年11月18~26日に東海道33番目の宿場町「二川宿」で開催のアートイベントで、前身のイベントから数えると3回目の開催

江戸、明治、大正、昭和と時代を経てきた歴史的な建物が数多く残るまちで、古民家や蔵を舞台に19組のアーティストの作品が展示。それに加えて多数のイベントやライブが展開した。入場料は500円

 

三ツ田屋会場

江戸時代に建てられた旅籠屋として始まり、大正時代には奥に黒レンガ壁の蔵を建てて米蔵や繭蔵として利用した豪商の建物。昭和・平成では「文房具屋さん」として親しまれていた

現在は古民家再生プロジェクトにより修復工事が進行中で、一時は使用不能だった部屋も今はほぼすべて使えるようになった

あまのしんたろう

今回の自分の写真展示は建物に入ってすぐの壁面

作品タイトル『リバリバ宿場』(←二つの川の宿場”二川宿”ということ)

まず地図を見て二川宿に属したと思われる地域を自分なりに調べて、その範囲内を毎月1回ペースで1年間撮り歩いた作品

東海道沿いを離れると特に昔を感じるものは目にしなかったけれど、その景色すべてが当時の人からしたら数百年後の未来なんだと考えると、それはそれで江戸時代を感じる気もした

展示してみて、いくつかの写真タイトルが”ダサ面白い”を狙いすぎてうまくいってない気がしたから、3日目からそれらを”オシャレ面白い”タイトルに変更してみた。タイトルの意味そのものは変わってないから、どちらが良いかは見る人それぞれの好みによりそうだったけども

”配布用しおり”は減り具合を見て期間中に3度追加し、最終的に471枚配布した

今まで適当に配りまくってたけど、ちゃんと計算したら1枚作るのに約9.77円かかってるから1度に全種類配った場合136円分と結構な額。これまでも一応”1回の来場でひとり1枚”のルールにしてたつもりだけど、今後ははっきり掲示するようにしないとなあ。ナノブロックの文字を作り直さねば

今回はライティングも自分でやることになっていたので展示のお仲間に意見を仰ぎつつ初めてライトを買って設置。あるとないとではかなり変わることが分かったから、次に暗めのところでやるときには積極的に使っていこうと思う

 

山本清人

テーマ『母川回帰』

魚が生まれた川に戻るように、一度は誰もいなくなったこの建物に人が戻るよう願いを込めた作品とのこと

吹き抜けに巻き付くように現れた龍のカッコよさ

龍の周りに浮かぶたくさんの球は魂的なものらしい。テーマの母川回帰から連想すると”これから生まれる卵”とも考えられそう。あと龍に願うことからドラゴンボールも連想した

 

市橋のん

作品タイトル『内在する光と影』

いつも卵をテーマにした作品を作り出す作家

作品に使われている糸は自分で綿花から作っていて、蔦は自然そのままのものと青いうちに形にして固まらせたものがある。素材作りからして季節単位の長い時間が流れていて古民家とリンクしていた

 

三木令子

作品タイトル『かみあしび』

タイトルの”かみあしび”は琉球音楽の起源とされる”神遊び”のこと。和紙を使った作品ということもあり”紙遊び”ともかかっていそう

壁の和紙作品は本来飛べない成虫の蚕を解き放つようなイメージ

手前の布作品は奥の作品に対して”舞台の幕”的な意味もあるみたい。布でこの生々しさすごい

 

原歩

『GIRLS' WAR』をテーマに金属鋳造作品を制作する作家

説明書きによると、展示空間から「戦後復興期」や「芝居小屋」といったイメージを受け取ったとのこと

「くま爆弾の投下前と投下後の狭間」との文言が、作品そのものを表していると思う。アメリカ、カワイイ、罪、原爆、コミカル、暗い時代、お芝居、刹那性などなどが詰まっていた

 

奥中竹代(ワークショップ)

4月から半年間にわたり行われた養蚕業のワークショップの集大成。これまでのワークショップで卵から蚕を育て繭をとり、染めて、絹糸にするところまで完了。今回は来場者にそれを織ってもらうことで1本の帯を作って完結する

これまで80人がワークショップに参加。休日ともなると初めてのお客さんも入り混じって常時稼働で帯が織られていき、このイベント会期で170センチの長さになった(完成は5mくらい)

 

山本哲也

中庭いっぱいに広がる6枚張りの大作品

作家は”映画の予告編”が好きとのこと。漫画的なデザインだけど時系列は分からないようになっていて、そのダイジェスト感はまさに”予告編”だった

中庭の大作品の向かい側にある渡り廊下には小作品群が。これらはいくつかのストーリーのシーンが混ざっていて、その中から今回の大作品のストーリーのヒントを探し出すこともできて楽しかった

初日にはなかった会場案内が二日目には書き上げられてた

 

宮嶋政穂

タイトル『竜宮』

三ツ田屋の奥にある黒レンガの蔵での展示

1階タイトル『竜の滝登り』

暗い部屋に水面の反射光がゆらゆら。入った時に水の流れる音が鳴る仕掛けだけど、その音はあえてトイレの音消し用の「音姫」を使っているとのこと

2階作品『逆さ不二「富士」』

急な階段を途中まで上るとピーピーと警告音が鳴る。2階の部屋を覗くと赤い光がユラユラし上下向かい合った富士山の噴火の絵が

1階の穏やかな雰囲気と2階の危機的状況の対比がありつつも、どちらもなんだかくだけた表現という共通点もある不思議な作品

来場者は窓からしか見られないがこの三ツ田屋のお風呂には作家が貼り直したタイル壁がある。この壁のテーマが逆さ富士だから今回の2階の作品が生まれたと考えられる

 

小島雅生

写真左の木々は2019年の同イベント開催時に使ったもので、4年間経ち土に還りかけるほど朽ちた状態。それに対して右の木々は最近とってきたもの

コンクリートの造形物の上に乗っているのは銅で鋳造作品を作るときに溢れたもの。通常であれば再度溶かして再利用するものだが、作者は偶然の産物に価値を感じ長い間とり置いているとのこと

古い木を挿している器は長く使用して使えなくなった鋳造用の”るつぼ”で、その台も錆び切った鉄製

展示を構成する要素それぞれに長い年月がかかっていて、それがこの展示場所の蔵自体が経てきた長い年月とリンク。長い長い時の流れを感じる一つの大きな空間になっていた

 

販売コーナー

参加作家それぞれが少しずつ作品を出して販売。事前に5000円以内の値付けに決めたことで、気軽に買いやすいものが並んだ

自分も写真集を出品

 

アーカイブ上映

今回のイベントの紹介と2019年、2016年の様子を11分55秒分にまとめた映像が上映

 

 

駒屋会場

瀬川明子

板張りの和室に現れた人形作品。「因幡の白兎」の物語を表現。神様の指が長く尖っていて色んな意味での中性的な存在を感じた

光の当たり方もあってなんだか妖艶。物語に出てくる”皮を剝がれたウサギ”なのかな

 

森一三

彫刻と書の作品。宇宙根本原理や無の揺らぎ等を芸術的テーマに掲げて活動しているとのこと。彫刻作品の”どこにもない形”な感じ惹かれる

 

榊原伸予

宇宙に咲く花のイメージで、その通りに作品もこの部屋いっぱいの巨大さ。とにかくまっすぐに明るい作品で観ていて元気になれる

 

奥中竹代

タイトル『おおきな海』

「嵐の瀬戸内海を見たときに自分の小ささを感じ、かえって大丈夫な気がした」という経験から作られた作品。実物すごく大きくて”うねり”の表現が見事だった

 

平林幸子

中庭のMotherから生まれた球体の命に、やがて羽が生えて遠くまで行って佇むイメージの作品

お釜に住み着くとお釜っぽい色合いになるみたい

やけに堂々としててカワイイ

縁の下でひっそり佇むコも

 

宮林さわ子

タイトル『令和群舞図』

自分から生まれ出る内なるものをカタチにしたような作品

右の怖いような絵を作り続けていると、そのうち左の華やかな絵も生まれていくとのこと

例えば「運動すると休憩したくなるけど、長く休憩してると体動かしたくなる」とか「甘いもの食べたら辛いものが、辛いもの食べたら甘いものが欲しくなる」とか、人間ってそういうものだし、人間の感情もそういうものなんだと思う

黒い箱は重く身動きが取れないイメージで、壁で漂うシャツは自由に解放されたイメージ。ここでも両極性が表現されていた

ということは足袋の作品も”両極的”なメッセージがあるはず。立って畳を踏みしめている足袋は今すぐ動き出しそうだけど寝転がっている足袋は当分動けそうもない、みたいな



中谷ゆうこ

具体的に書いた絵の輪郭を溶かして消した絵画作品。囲みを取り払うことで魂的なものを自由に解き放つイメージ

「目に見えないイメージを写実的に描く感じだから、抽象画っぽいと言われるけどそうじゃない(むしろ写実作品)」みたいな説明を聞いて、なるほどと思った

このしずく型の作品の淡さ、好き

 

兼藤忍

「いのち」をテーマにしたものを作る陶作家

部屋の端から端まで続くいのちたちの行列を間近で眺めていると、自分もその奇妙な世界の中に参加している気分になる

外の灯籠の中にもいのち作品が。あまりに馴染んでいるから、もともとそういう灯籠なのかと勘違いしてしまう

 

Jack Frosts

現代舞踏のパフォーマンス。この時は兼藤忍エリアでの展開で、作品のイメージとの融合が行われていた

乳母車作品と舞踏の共演。駒屋をスタートして三ツ田屋までの道のりを、お客さんを引き連れながら行脚

別日には三ツ田屋での舞踏も

2階を見上げての観賞

 

大野俊治

タイトル『メメントモリ』

91歳で亡くなった父の絵を以前撮影した写真から描き、その後にまだ生きている母の絵を描いた作品。死を意識することで、今日の大切さを想う

4連の絵画は電車でスマホをいじっている人から着想し、スマホの使い方の分からない餓鬼を描いたとのこと。アゴに挟んだり、かじったり

 

上田将司

二川のことを調べた時に見た”染めた反物を広げて天日干しする黒白写真”のイメージを基に作ったという、布が風に吹かれる作品

ただ今回の期間は風の強い日が多く、捻じれたり木や灯籠にひっかかってしまったりと作家泣かせの環境。展示中も張り方を変えたり並べ方を変えたりして、その作業自体をパフォーマンスとして楽しむ形になっていた

強風を見越して会期の後半には”強風仕様”の作品に変化

 

食プロジェクト

二川ボランティアによるテントでのパンやケーキ、ホットドリンクの販売。オーブントースターがあり、その場でこんがり焼いたパンを楽しめた

数種類食べた中ではこの写真左の生ハムのパンがすごく気に入った!



LAMP 美術集団

食にまつわるテーマでアート活動をしているグループの作品。映像作品が流れるこの建物は、よく海産物の出荷に使われる”トロ箱”が組み合わさってできている

中では絵本風のアニメ作品が上映。ペットとして飼っていた「キメラ」が3年たって大きくなってきたから、動物園に預けて新たに小さな「キメラ」を飼うというお話。やけにしっかり食卓のシーンが描かれる

 

 

futagawa cross-point155会場(サテライト会場)

こちらはサテライト会場になっていて入場は無料。ここではLAMPの作品が展開

海外の家でよく見る鹿の頭の壁掛け。頭部までしかイメージ湧かないけれど、その胴体部分はしっかり食べられているということを表現した作品とのこと

タイトル『晩餐の最後』

食べかけの食品サンプルばかりが大量に並んだ作品。居酒屋メニューが食べ残された状態になっていて”食品ロス”への警告そして”料理人に対する侮辱”への批判が込められているように感じた

大橋夏実によるパフォーマンス『Chimera』の第5弾

役者のテラ・マルミと共に、自分やあなたは人間なのかどうなのかを問う演劇を上演

 

 

まとめ

今回のイベントの作品は「いのち」をテーマにしたものが多かった。事前にテーマ設定をしたわけではないのにこうなったのは、二川宿という長い歴史のあるこの展示空間がそうさせたのと、コロナや戦争が起こっているこの時代が影響したみたい

まあ自分はだいたいいつも”まちなか”での展示をしているし展示場所も入口の壁面で特に趣深い場所って訳ではなかったから、良くも悪くもいつも通りなスタンスでの展示になった。ただ入場料を取るイベントに参加するのは初めてで、その点のプレッシャーは大きかったかな

あとは、色んなジャンルで活躍している参加アーティストと話せたことが大収穫だった。作品制作や作家活動をしていく上での勉強になった

今後は作品内容に加えて”見せ方”や”宣伝”なんかも工夫して頑張っていく!