「袈裟切り地蔵」の話を知る
静岡県湖西市にある白須賀宿歴史拠点施設『おんやど白須賀』に行ってみた
白須賀宿というのは、大昔は海岸沿いにあったんだけど1707年の津波被害によって小高い台地に移転して、そこからまた栄えた東海道の宿場町のこと。この施設はその白須賀宿の紹介や資料の保存を目的としている

6畳くらいのスペースに立派な置物と立派な机があって、むかしの居間を再現したような雰囲気になっていた
これを見た時は展示の一つだと思っていたけど、説明パンフレットを見たらこの場所は「休憩室」とあったので、もしかしたら上がってくつろいでよかったのかも

「展示室コーナー」には横4メートル奥行1メートルくらいのジオラマがあった
真ん中にあったボタンを押したらジオラマの各所にスポットライトがあたって、弥次さん喜多さんの掛け合いがスピーカーから流れ、白須賀宿にまつわる話が紹介される

袈裟切り地蔵の話
「ある侍の前におばけが現れた。侍が刀でおばけを切ると、そのおばけは実はお地蔵さんで胴体が真っ二つになってしまったという。不気味な姿のお地蔵さんだが、まちの噂ではそのお地蔵さんにお参りをすれば白須賀宿に津波が来なくなるらしい」
という話がスピーカーから流れてきた。お地蔵さんがわざわざおばけになった理由からしてわけわからないけど、面白い話だなと思った

「おんやど白須賀」近くの「潮見坂の見晴」からの眺望。むかしの人もこんな眺めを見ていたのかな

調査開始
せっかくここまできたので資料館「おんやど白須賀」のジオラマ展示で紹介されていた『袈裟切り地蔵』を探してみることにした
袈裟切り地蔵の場所は観光パンフレットの地図に載っていたものの、その地図は手描き風のイラスト。なので正確な位置はわかりにくかった。とりあえず近そうなところに車を止めて、歩いて探してみることに
歩いて捜索
何かの生き物の像に見えたけどこれは袈裟切り地蔵ではなかった。それどころかよく見たら像でさえなくて、ただの木の幹だった

探索のついでに見かけた心惹かれる建物

こちら側により心を惹かれた

聞き込み
完全に迷ったので地元のおじさんに「袈裟切り地蔵」の場所を聞いたら、この先のお寺のことではないかという情報をGET。かなり近くまで来ていたようだ

教えられた場所の途中にお墓があった。ちょっと寄り道

袈裟切りじゃあないけど、首がない像はあった

お墓の奥でスターウォーズに出てきそうなキャラに遭遇

聞いた場所「礼雲寺」に到着
教えてもらったお寺に到着、中を歩いてみた

お寺の番犬の鳴き方が恐い。首のチェーンをピンピンに貼って吠える

お寺を回り込むように続く長い道に、ずっとお地蔵さんが並んでいた

まだまだ続く道、長い

しかし、一体一体見ながら歩いたのにこの中に袈裟切りされている地蔵はなかった

登りきると「十王堂」の前に出た。十王堂は小さな公民館っぽい建物で、その中には極彩色の閻魔像が鎮座。地味な外観と閻魔様の立派さがアンバランスでおもしろかった

ここで周りを見渡して「あった!」と思って近づいたんだけど、これも普通のお地蔵さん。派手な傷はなかった

近くの通りに、このあたりのお寺関係の案内板があった。ここにも「袈裟切り地蔵」の文字はない。そして落書きのノイズがすごい

改めて聞き込み
適当に道を歩いて他に看板がないか探していると、地元のおばあさんが向こうから歩いてきた
声をかけて「袈裟切り地蔵」の場所を聞いてみると”さっきまで歩いていたあたりの横道の先にある”ということを教えてくれた。お礼を言って今来た道を戻ろうとするとおばあさんは別れ際に「お化けが出るよ」と言って笑った。すぐに「冗談冗談、お昼に行っても何にも怖い事はないから、大丈夫だからね」とまた笑って言っていた
資料館で聞いた話だと「袈裟切り地蔵」は津波を鎮める地蔵ということだったんだけど、もしかして本当は怖いモノなんだろうか?ただの観光気分で地蔵を探しているのに気づかないうちにホラーに足を踏み入れようとしてるのかな?
「昼は大丈夫」っていう言葉のウラは考えないことにして、とにかく教えてもらった場所へ行ってみることにした

のおばあさんに教えてもらった道順で「袈裟切り地蔵」のある場所に向かって歩いてみた。「すぐ先の道を右に曲がって、まっすぐ行ったら突き当たるから左に曲がると、道じゃない道があるからそこを進む」

まず、すぐ先の道を右に曲がっても突き当たらずに国道一号線に出てしまった。だいたいの方向は合ってるはずなので、何度も道を行き来してそれらしい道を探してみた

さらに聞き込み
そうこうしていると、道の掃除をしていたおじさんが「何か探してるの?」と話しかけてきた。「袈裟切り地蔵」への行き方を聞いてみると「あんなところにいくの?さわったらたたりが……むかし死体を埋め……ゴニョゴニョ」みたいな言葉を濁す感じに。地元的には縁起が悪いところらしく、そこを探していることを不審がっているみたいだった

「お参りをすると良いって資料館で見たんですけど」と伝えると、一応納得してくれたみたいで「200mくらい先の、ほらあそこに見える森の中」と指さして詳しく教えてくれた

指さしてた森はこの場所だと思うんだけど、本当にここか確信が持てなかった。右に畑があったからそのための道なだけなんじゃないかと。ただ、おばあさんもおじさんも「舗装されてない道を進んでいけばすぐお地蔵がある」と言ってはいたから、合ってるのかも

進んだらすぐに道が完全に途切れてこれ以上先は崖になっていた。さすがにこんな道通るところが観光パンフレットに載ってるわけないので引き返した

資料館で聞いてみる
すごく近いところまで来てるはずなのに、どうしても見つからない「袈裟切り地蔵」 もしかして逸話の通りお地蔵が化けて道を教えていて、迷わされてるんじゃないかという不安が出てきた
とりあえず車に戻って崖の下側に道がないか探してグルグルしていたら「袈裟切り地蔵」を知ることになった発端の資料館「おんやど白須賀」に戻ってきてしまったので、そこで道を聞いてみることにした

資料館の事務所にいた2人に話をしたら、道の説明が難しいらしく1人のおじさんが車で先導して連れて行ってくれることに
着いた先はやっぱりさっきの森の近くだったけど、畑用としか思えない地味な細い道の方に車が止まった。下の写真の、右の崖と畑の囲いの間が地蔵への道でその先に森を通れる穴があるとのこと。ちなみにさっき引き返した行き止まり地点は写真左奥の林になってるあたり

道を歩いていくと右側の崖下に国道一号線がみえた。ここまで地蔵への案内板は全くなかった

おじさんの先導で森の穴につっこんでいく。横も縦も狭くて、右足はもう崖を半分踏んでるってくらい足元が細い。一応道を確保するため左側の木の枝は切ってあったけど、崖にビビって左に寄るとこれが不意にコツンと肩に当たって危ない

袈裟切り地蔵
やっと念願の袈裟切り地蔵に到着。一体だけが袈裟切りになってるはずだったけど、もうほとんどの地蔵が朽ちて地面に体が転がっていてどれが袈裟切り地蔵なのか分からなかった
おじさんは「来てみたらどうってことないでしょ」と言っていた。たしかに一体だけ割れてたら怖いのかもしれないけど、全部こんなだと怖くない
でも思い返したら地元の人たちが怖い前提で話してくるからそれにつられただけで、もともと自分は津波を鎮めてくれる「いい地蔵」だと思って探してたんだった

話によると、ここは移転後の場所でもともとは大きな道の方にあったとのこと。学校を建てるために動かしたとか。今回の自分のように、ちょくちょく観光客がここまでの道を聞きにくることはあるらしく「パンフレットに書いてあるのに案内板ないのはよくないから、立てるように手配しようかな」とは言っていた

調査終了
おじさんにお礼を言って、最後にもう一度「袈裟切り地蔵」にお参りをして、ここを後にした。ただの名所観光がちょっとした冒険になって、いい具合の予定の狂い方をしてくれて大満足だった
