
歴史あるまちなかを気軽に街ブラ&アート観賞できるイベント
『大野芸術祭』とは愛知県常滑市大野町で3月に開催されるアートイベントで歴史は新しく、2025年に2回目を迎えた
大野町内に散らばった10カ所以上のアート展示、パフォーマンス、ワークショップを巡る仕組みで、各会場の入場は無料。それぞれの会場は散歩感覚で歩いて回れる範囲なので、アート観賞と同時に”歴史ある大野のまち歩き”もできてしまう。まさに一挙両得で満足度の高さに繋がっていた
大野町とは
名古屋の南、知多半島西側の伊勢湾に面した地にある街
今では”静かで小さな街”といった印象だが、江戸時代には「大野湊(おおのみなと)」と呼ばれ栄えた港町。当時は川岸に米倉が並び、尾張藩の海運関係の役所も置かれていたとのこと。現在も築百年以上の古い家並みが多く残っている

アクセス
・電車の場合
名鉄大野町駅下車してすぐ案内板あり(写真右の黄色の看板)

・車の場合
オススメの駐車場は三菱UFJ銀行常滑支店大野出張所の横。イベント範囲の南側に位置し本部に近く収容台数が多め。60分100円、24時間400円

イベント範囲の北側に停めるなら大野海水浴場駐車場。QRコードでの支払いで現金不可なので注意。1日500円

2025年開催
2025年3月15日~23日に開催。第1回よりもさらに良いイベントになっていた。特にまち歩き関連が改善されていて、案内板のデザイン性や分かりやすさが大きく向上し、配置場所も増加。より”歩いて楽しいイベント”になった

ロクノゴジュウナナ西棟

「陸のかいぶつと海のかいじゅう」
海のゴミで構成された作品。付着物が”治りかけの傷”にも見えて生物的な生々しさがあった

「エリオット・ヘイグ+澤田奈々」
浮かび上がるムカデ。古民家のイメージに良くも悪くもマッチ

「小野田明恵」
サイアノタイプ(青写真)という古い写真技法で撮影された女性の肖像。はっきりとは写らないことに意味がある

造花の写真を庭に展示。「造花は朽ちはしないけど、この造花の写真は放置することで紙としては朽ちる」という作品

「金子未弥」
山にまつわるストーリーを来場者から聴き、ひとつひとつの山を描き重ねていった作品

「Tripedarhythm」
部屋には均等にスピーカーが配置されていて、中央に設置されたモニターを指でなぞるとそれに対応した場所から”気配を感じる音”が鳴る


大野芸術祭本部&SHOP(ロクノゴジュウナナ)
金曜日はショップがお休みだった

ロクノゴジュウナナ庭
「中山りの」
小説作品。途中で視点が変わったり、最後まで読むと「登場人物の関係性」や「詩の意味」が分かったり。短い文章でのシリアスな話の中に”仕掛け”が組み込まれていて面白かった

わくわく広場
「Ono」
駅前の広場でのライブペイント。電車からも見える位置ということで車窓からも目立つよう、ビビッドな色での制作を進めるとのこと。最終日前に完成予定

喫茶ゆる~む

「このよのはる」
うたっておどれる似顔絵ユニットが滞在して展示&パフォーマンス。もともとレトロポップなお店をこのよのはるがインスタレーション(というかデコレーション)することでどこまでが作品か分からない一体空間に

二人で左右から同時に書き上げていく似顔絵や、お店にあったレトロなミルで挽くコーヒー(500円)が飲めたりもする

古民家商店とびらびと

「川嵜涼介」
大野町に滞在して見た風景や出会ったモノを描き溜めて、開催中盤までは制作風景込みでの空間を公開。そして最終日にはこの空間を”展示ギャラリー”にするとのこと。大野町の雰囲気がそうさせるのか元々そういう作風なのか、穏やかな絵が多かった

海辺のまちならではの拾い物も

びーちゃんテラス

「佐藤千恵」
バタン島漂流記という大野町の水夫たちの実話を基にした冒険小説があり、その小説からインスピレーションを得て作られたアート作品
あらすじは「15人の水夫が物資の輸送中に難破し、フィリピンに漂着。現地民との関係や島での生活を重ね、船を作り上げて日本に戻る」というもの

手前の陶の造形物は”壊れたハート”であると同時に”錨”のようにも見えた。繋がった紐や流木の並びなど、見様によって色んな意味が感じ取れる

2024年開催
2024年3月16日~24日に開催。第1回開催の初日、しかも午前早くに行ったこともあり、いくつかの会場は作品の設営や案内の設置でバタバタ気味。とはいえ小さな町でのイベントということもあり、そういった手作り感も含めて楽しめた
それぞれの会場の都合上どれかの展示はお休みになっていて、1日では全部の作品は見られないスケジュール。そのため「全作品を観なければ」という考えは最初からなくなり「観られるものだけ観ればいい」という開き直り的な思考が生まれた
狙いか、それとも偶然か、これがかえって”気楽さ”を生んで「ブラブラまちを歩いてブラブラ作品を観る」という楽しいアート観賞の環境を作り出していた

ロクノゴジュウナナ
この建物は”ひとのうごき、かかわり、おもいをうみだす活動”を目的に開かれたレンタルスペースとのこと。今回のイベントの本部的な場所になっていた

「torisum」
作家は半田市出身で、同じ出身の作家・新美南吉の物語を基にしたイラストレーション作品が展示。暖かい色合いに丸みあるフォルムで見ていて優しい気分になれた

ロクノゴジュウナナ西棟
ロクノゴジュウナナの道を挟んだすぐ向かいにある古民家

「マガノゾミ」
会場にいた作家に話を聴いたところ一筆描いてから次の一筆まで、長い間をおいて再イメージや構築をするそう。なので筆を入れている時間は長くはないけど完成には何日もかかっているらしい。感性と理詰めの長考作業がなんとなく”将棋”っぽいと感じた

「大久保拓弥」
2階部分3部屋での展示。築200年というこの建物の時間や今の時間を表現した作品

いくつもの白く映し出されたモニターと鏡が設置。そのモニターを鏡に反射させると映像が見られる仕組み

旧中村医院
「松田菜優子」
立派な玄関に大きな絵画の存在感がマッチ

えび匠 津多屋
「こどもアーティスト」
上から「ハンバーガー」「雨」「耳」とギリギリわかる抽象画っぽかった

大野海水浴場
鎌倉時代にここに訪れた鴨長明が詩の中で「ゆあみ(潮湯治)」という言葉を使ったことから「世界最古の海水浴場」と言われている海岸。ちなみに今も海水浴場として現役

大野芸術祭エリア内の5か所にこの文章作品が散らばっていて、その物語に出てくる登場人物のそれぞれ視点が楽しめる。物語の舞台はこの大野町になっていて、さっき通りかかった場所が物語に出てきたりするのも面白かった

食事情報
『とびらびと』
土日営業で食事、喫茶、飲酒と懐深めなメニューがあるお店

古民家が利用されていて、インテリアも古いモノばかりで昭和の雰囲気

「こづゆ麺」(850円)※週替わり麺
福島会津の郷土料理「こづゆ」にラーメンとそうめんの間のような麺が入った料理。具だくさんでそれぞれがうまい具合に主張していて美味しかった。あと付け合わせの漬物的なものがピリリと辛くてびっくりした(自分はとても好きな味)

「特製ポークハヤシ」(850円)
野菜がゴロゴロ。ハヤシと言いつつけっこうカレーに近い味を感じた

「ミャンマーコーヒー」(450円)
酸味と苦さが抑えられて、香りと深い味をダイレクトに感じられる素直なおいしさのコーヒー。独特の形の焼き物カップも良い!

『中華園』
大野芸術祭の会場マップに「おおののおいしいみせ」として載っている町中華店

「半チャン角蒸ラーメン」(930円)
ランチメニューのセットでラーメンとチャーハンに加え小鉢の麻婆豆腐付き
”角蒸”はとても柔らかく、甘いタレの味付けしっかり。この店の名物なのも頷ける美味しさ。炒飯は卵とネギ中心のシンプルなもの。麻婆豆腐は辛さなく、単体でもチャーハンと合わせても楽しめた

「フワトロ天津飯」(780円)
このお店のもうひとつの名物。ふわっふわな玉子具合、その割にしっかり強めな味付け。その美味しさと独自性を考えると、今回食べた中ではこれが一番のオススメ料理!(ちなみに別メニューには普通の「天津飯」(750円)もあった)

芸術祭を巡っている間に出会える大野の風景
恩波楼
大野海岸近くの明治時代からやっているという旅館。鮮やかな朱色の外観が目を引く

矢田川水門
絵になる風景

古い町並みの路地
明治大正昭和平成さまざまな時代の建物が並んでいて、あえて路地を狙って歩くのもおもしろい
